技術講習会の演習と実習の内容
いよいよ講習会がスタートしました。
講習会の修了認定を受けるには、32時間の出席が必須で、欠席はもちろん遅刻・早退も認められません。
仕事のシフト調整はあらかじめ職場に頼んでいたものの、体調を崩して休んだりすることのないよう、体調管理にはいつも以上に気を配りました。
講義の流れ
基本的に、実技に移る前には説明を兼ねた授業が毎回行われます。
例えば、テキストにある事例に従い、声掛けや、その際に気をつけることを学びます。
合わせて確認ポイントや具体的な介助方法、どういった意図によりそれらを行うのか云々が、講師により説明されます。
筆記試験に出る内容も含まれるため、皆、当然のことながら真剣です。
演習の時間は皆真剣
そして、ひと通り学習を終えると、教室を移動して、いよいよ演習時間に突入です。
実習室には、ベッドが4床設置され、車椅子や、事例ごとに必要になる小物や、装具、椅子、歩行器などが用意されていました。
グループでの演習前には、事例ごとに講師の方々による模範演習があります。
メモをとっていいよと言われたので、皆、最初はふむふむとテキストに動作や声かけのポイントを書き込んでいるものの、すぐにそれどころではなくなっていました。
あまりにも内容が濃い上、時間も長いため、しっかり見ていないと介助のポイントを見過ごしてしまいます。
約10分ほどの模範演習が終わると、受講生からは一斉にため息のような声が漏れていました。
その「ため息」意味は、「うわーそんなに覚えることたくさんあるの〜」という、宿題が大量に出されたような感覚に近いものでした。
ただ、嫌々な後ろ向きな意味ではなく、「その宿題さえやればあなた達の受験は大丈夫!」というような、そんな感じの前向きな雰囲気が全体的にありました。
生徒が実際にやってみるのが実習
実習は5人1組で行われ、そこに担当講師が一人つきます。
そして、事例に従いながら利用者A・Bそれぞれに対して介助を5パターンずつ行います。
介護者と利用者の役は、その都度交代します。
利用者A・Bに関しては、それぞれ詳細な設定がありました。
事例A
事例Aの山田さんは男性で要介護3。
脳梗塞のため、右麻痺、失語症あり。
歩行はT字杖、シューホン使用。
10秒ほどなら立位保持可能。
事例B
事例Bの鈴木さんは女性で、脳梗塞による左片麻痺。
左空間無視。車椅子使用。
要介護4。言葉によるコミュニケーション可。
他にも現在の生活状況や家族構成、過去の生活歴や既往歴まで、実に細かな設定が成されています。
この設定をふまえた上で、移動、衣服の着脱、食事、入浴、排泄の介助を行わなくてはなりません。
声かけ一つをとってみても、左空間無視のある事例Bの鈴木さんには、左側から声をかけてもそこに人がいることを認識してもらえません。
軽く肩を叩くなどするか、手の先で視線誘導するなどして、左側に注意を向けてもらわなくてはなりません。
失語症のある事例Aの山田さんは、頷くか首を横に振るという動作で返事を返されるため、YESかNOで答えられるような質問をしなければなりません。
「どうされますか?」といった抽象的な質問には答えることが出来ないのです。
これは簡単なようで、いざ実践となるとなかなか難しいものでした。
まだ肌寒い時期だというのに、受講生は皆汗だくになりながら、介護者役に大奮闘しました。
技術講習修了試験
介護技術講習会の修了試験では、実技の演習で行った10パターンのうちの、どれか1つが課題として出題されます。
実際の実技試験と同じく、内容は各々の試験直前まで知ることはできません。
制限時間は7分間です。
国家試験の実技試験の時間は5分ですから、それに比べればたっぷり時間はあるように思いますが、ゆっくり丁寧に行っていると7分なんてあっという間に過ぎてしまいます。
試験に落ちない為のポイント
それに、必ずしなければいけない
- 確認の声かけ
- 動作のポイント
それらが抜けていると、仮に時間内に出来たとしても点数がもらえません。
かといって、時間が足りず最後まで出来なかったとしたら、出来なかった箇所のポイントは最初から入らなくなるので、評価はかなり厳しいものになってきます。
途中でやり直しても大丈夫とのことでしたが、時間が足りなくなることを考えると、戻ることは諦めて、ともかく最後までやり終えた方が得策かもしれません。
家では練習あるのみ
びっしり動作のポイントと台詞の書かれた副読本を片手に、台所で一人芝居をやっている私を、家族は「どうしたの?大丈夫?」と奇異の目で見ていましたが、修了試験に合格するためですので構ってなどいられません。
制限時間にタイマーをセットしてスタート。
ですが、てきぱき行っているつもりなのに、全て終了しないうちに7分にセットしておいたタイマーが鳴ってしまいます。
何度も何度も試行錯誤しながら練習しました。
修了試験当日
当日は、朝からかなり緊張していました。
携帯電話を受付に預け、いつものように教室に入り、まず試験の概要の説明を受けます。
そして、名前を呼ばれた順に4名ずつ、まず待機室に移動となり、そこで課題の用紙を渡されます。
各自でそれを読みながら、頭の中で動作や声かけをシュミレーションしてみるのですが、緊張のあまり、なかなか頭に入ってきません。
課題の内容は、
『山田さんは、居室から脱衣室まで歩いて移動してきました。
山田さんを脱衣室で迎え、衣服を脱ぎ、自宅の浴室での自立に向けた入浴の介助をしてください』
です。
実際のプリントには、山田さんが失語症であることや、右麻痺があることも書かれていたと思います。
歩行時は、常は短下肢装具を付け、ウォーカーケインを使用されていますが、脱衣所から浴室までは、滑ると危険ということでそれらは使用できません。
簡単なようで、実はチェック箇所の多い課題です。
いざ実技
待機時間が終わり、試験室に移動して、パーテンションで仕切られた自分の番号の場所に立つと、頭の中は緊張のあまり真っ白になっていました。
試験官の「始めてください」の声を合図に、利用者役の講師の前に進みます。
実際の実技試験との最大の違いは、一度演習した内容であることです。
一度やってるんだから楽勝だろうと思われがちですが、試験官がチェックしているポイントがわかるだけに、一つでも落とさないようにしようと必死になりすぎになってしまい、「あっ、今確認をし忘れた、声かけしなかった、どうしよう」と、つい動揺してしまうのです。
しかも同時に4人が行っているので、他の受講生の声も聞こえてしまい、もうあの人あんなところまで進んでるんだ、とますます焦ってしまいます。
私は大きなミスはしなかったものの、結局時間内に最後まで終えることが出来ませんでした。
「あー落ちたかも」と落胆しつつ、試験が終わった人は、また別の教室へと移動します。
そこで最後のグループの試験が終わるまで待機となり、全員が終わると再び元の教室に戻って、今度は結果を待つのです。
当日に合格発表
後日発表ではなく、一時間後には合否がわかってしまいます。
不合格となった者は、午後から補講があるということでした。
ちなみに、評価はA〜Dの4段階で、A〜Cが合格となります。
数人ずつまた別室に呼ばれ、試験官から直々に結果と総評が告げられます。
私はいくつか注意を受けたものの、何とかB判定で無事合格となりました。
終わった途端、どっと疲れが押し寄せてきました。よかった、終わった…。
それにしても、講習の修了試験でもこんなに緊張するのだったら、実技試験をもし受けていたらいったいどうなっていたんでしょう。
実技試験が免除になって本当によかった、しみじみそう思いました。
講習会が終わってからの振り返り
技術講習会の参加資格が、実務経験が3年以上と一口に言っても、勤務先によって日々の業務の内容はさまざまです。
取り巻く環境によっても違いますし、利用者さんの要介護度によっても当然変わってきます。
私のいたクラスは、デイサービス勤務が最も多く、
- デイケア
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム
- 老健
- ケアハウス
- ヘルパーステーション
- サービス付き高齢者住宅
- 病院
等と、実に様々な職場で働いている人が集まっていました。
働いている環境が違うと、職員に求められる介助の中身もまた違ってきます。
仕事内容も大きく違いました
私の働いているデイサービスは、ほぼ自立されている要支援1の方から、寝たきりの要介護5の方まで色々な方が来所されます。
杖歩行の方もいらっしゃれば、手押し車(老人カー)や歩行器を使用の方、車椅子の方、終日をベッドで過ごされる方もいらっしゃいます。
認知症の方も当然いらっしゃいます。
クラスメイトの中には、今回の技術講習で車椅子を初めて押したという方やら、下肢装具のはめかたを知らない方や、歩行器を初めて見たという方もおられました。
逆に私は、在宅で使用するようなポータブルトイレや差し込み便器は初めて使うので「上手にできるか?」と、とても緊張しました。
そんな中、受講生同士て教え合ったり、励まし合ったり、互いの職場や仕事について話し合ったりしました。
普段は、別の施設の職員と交流する機会は滅多にないので、とても刺激的で、介護技術を習うだけではなく、そんな情報のやりとりが有意義で楽しかったです。
日々の介護を振り返って
自分が、時間に追われる介護をしているということは薄々感じてはいましたが、技術講習では、さらにそれを実感することになってしまいました。
利用者さんご自身の手で・力でやっていただける場面で、ついつい手を貸してしまっていたり、一部介助で済むところで全介助をしていたりしている・・・
今、思い起こせるだけでも、そんな場面がいくつも頭に浮かびます。
一日に35人もの利用者が訪れるデイサービスでは、お一人ずつとの濃密な関わりというのはやはり難しく、もっとこうして差し上げたいと思ってはいても、実際はそうはできない現状がどうしてもあります。
職員の数も限られています。
ぎりぎりの人員では、確かに理想ばかり追い求めてはいられません。
お一人に手厚く関わっているその周りでは、他の方が何人も待たされ、その間放置されることになってしまうのです。
ですが、
- できない
- 無理だ
- 時間がない
と嘆いてばかりいては、せっかく習ったことが机上の論理となってしまいます。
「こういう風にされたら、ご自分でもできますよ。よかったら試してみてくださいね」とやってみせたり、声かけをするぐらいは、すぐにでも実践出来るのではないかと思います。
たとえ小さな一歩でも、常に前進していたいものです。
次は「筆記試験の申込みに必要な受験の手引きと実務経験証明書」です。