訪問介護サービスの質向上の為にはヘルパー育成とニーズの把握
サービス提供責任者が訪問介護サービスの質を向上させていく為にできること、それは、
- ヘルパーを育成すること
- 利用者のニーズを把握すること
だと私は考えています。
(1)ヘルパーを育成すること
ヘルパーさんを育成することは、研修・技術指導を実施するだけでなく、日常業務を通してヘルパーが学ぶ意識や機会をつくっていくことが重要です。
その為には下記3点の項目を日頃から行っております。
1.ヘルパーの訪問介護の状況を把握する
ヘルパーからサービス提供責任者へは、
- サービスに入る前
- 入った後
に報告をもらうようになっていると思います。
サ責はヘルパーから報告を受けた時には、利用者の様子やその時にヘルパーが気になったこと、素朴な疑問、どんな小さなことでもヘルパーの話に耳を傾けます。
また、定期的にヘルパーと一緒に利用者宅に訪問し、様子を聞くこともします。
ヘルパーが悩みながらサービスに入っているようであれば、実際にサービス中に少し出向いて様子を見に行ってあげると、ヘルパー自身が気づいていない課題が見えたりするからです。
このように、随時ヘルパーと話をする時間を持ち、
- サービスの振り返り、
- 疑問に思ったこと、悩んでいることをどのように解決できるか?
などを一緒に考えます。
通常の業務を当たり前に流してしまうのではなく、振り返りの時間をつくることでヘルパーの意識向上につながり、結局は成長にもつながっていくことが多いです。
2.経験を通して成長できるように意識する
ヘルパーに訪問介護を依頼していく中で、各ヘルパーそれぞれに得意な部分と、そうでない部分があることに気がつくと思います。
実はそれを把握して上手く使いこなすと、ヘルパーが経験を通して成長できる環境を作り出すことができるのです。
私はサービス提供責任者の時、コーディネートしていく中で、「このヘルパーさんにとって少しハードルが高いかな、でもチャレンジになるかもしれない」と思う内容のケアをあえて依頼していました。
丁寧に様子をみながら、少しそのヘルパーにとって難しいと感じる内容のケアを任せていくのです。
もちろん、初めはヘルパーも迷ったり悩んだりしますが、それを乗り越えると自信につながります。
そうすると、別のサービスにはいった時に以前よりもヘルパー自身も成長できていると感じるようです。
ですから、サービス提供責任者は、ヘルパーが業務を通じて気づきを得られるようなチャレンジ的な仕事も割り振ってあげましょう!
3.ヘルパーの活動記録の大切さ
ヘルパーはサービスに入ったら訪問介護サービスの活動記録を書きます。
サ責がヘルパーがサービスに入っている様子を知るには、その活動記録はとても大切です。
その報告書をしっかり読みとることで課題の早期発見にもつながるからです。
訪問介護サービスの活動記録について
活動記録は、ケアの最後にその方の自宅で記載する場合が多く、時間も限られているので誰でも簡潔に分かりやすく記載できるようになっています。
事業所によっては複写になっており、訪問記録として利用者に印鑑をもらい、控えを渡すなどします。
記載内容は、
- サービス内容
- ヘルパーの連絡事項
などです。
サービス内容は、生活援助の中での、
- 掃除
- 買い物
- 調理
- ベッドメイキング
- 身体介護の移動介助
- 入浴介助
- 排泄介助
など項目がありヘルパーがチェックできるようになっているものが多いと思います。
また、「その他特記事項」として自由記載できるところがあります。
ヘルパーの連絡事項の活用方法
「ヘルパーの訪問介護の状況を把握する」でも書いたように、サービス提供責任者はヘルパーに対して、「ケアに入っていてどうだったか?」を聞きますが、その場では聞けなかったことが活動記録に書いてあることもあります。
逆に、いつも同じ記載内容であれば、本当に変化がなかったのかヘルパーに聞き取りを行います。
なぜなら、
「いつもは入浴の前にトイレに行くが、今日は行かなかった(排泄介助なし)」などのいつもと違う少しの変化が、後に数週間経って体調変化となって現れることもあるからです。
そういうことから、ヘルパーの活動記録は利用者の様子や変化をくみ取るのに大切なものです。
また、記録をしっかりしてもらうことで年月が経過してもその時の状態を振り返ることができます。
記録はそのとき確かに訪問介護サービスを実施したという証拠にもなります。
利用者やその家族から情報の開示を求められたときにも対応できるよう、しっかり管理していくことが大切だと思います。
(2)利用者のニーズを把握すること(フェルとニーズとプロフェッショナルニーズ)
訪問介護サービスの質を向上させる為には、利用者のニーズを把握することも非常に大切です。
サービス提供責任者だけでなく、援助者すべてに必要な視点だと思います。
ニーズをしっかり捉えられるかによって、その利用者への支援目標設定や方向性が変わるからです。
1.利用者の話をよく聞くことで表出されるニーズ
サービス提供責任者は、定期的に利用者宅に訪問して話を伺います。
そして、はじめの訪問介護計画書を作成する時や、その後ヘルパーが入るようになってからも、
- サービスを利用して生活はどうか
- 目標に沿ってサービスが行えているか
などをモニタリングします。
私はこれらの過程を大切にして、利用者とコミュニケーションをとることで、利用者が本当に思っていることを話せるような関係づくりができるようにしました。
利用者がよく話してくれるようになると、「実は私は映画が好きだった。今は外には出にくくなっているけど本当はもう一度映画を観に行きたいの。」など想いを話してくれるようになります。
そんな想いを聞きだせるようになると、私は「やった!」と思っていました。
その「本当の想い」は本人のニーズであり、その人が自分らしく生活でき、健康を維持していくための目標につながるものだと思うからです。
2.フェルトニーズとプロフェッショナルニーズ
- 利用者自身が感じているニーズを表出されたニーズを「フェルトニーズ」
- 利用者本人が気づいていないが、私たち専門家の視点から必要だと思うニーズを「プロフェッショナルニーズ」
と言いますが、私はこのプロフェッショナルニーズをどう見立てるかによって、支援の方向性は大きく変わると思います。
例えば、認知症の方で、徘徊を繰り返す方がおられたとします。
その方は「家に帰りたい」と言われます。
しかし、本当に徘徊の理由はそれだけではないのかもしれません。
もしかしたら実は話を聞いてほしいからそのような行動に出るのかもしれないし、身体的状態が関係しているのかもしれません。
「本人も気づいてはいないけれど、本当は何を望んでいるのか。」本人や周辺の状況を専門職として観察することで、それを明らかにしていくことも大切な視点であると思います。
訪問介護の立場から専門的な視点で利用者と関わり、見立てをしていくことが大切だと思います。
それをケアマネと共有していくことでより充実したケアプランにつながり、利用者の本当に望む生活のための援助ができいくのではないでしょうか。
以上が、私がサ責の業務を通して気がついた「訪問介護サービスの質を向上させる為に気づいたこと」でした。
参考になれば幸いです!